✍ この記事を書いた人

半導体メーカー5年 → CAD設計13年目の現役製造業エンジニア。新卒時に内定承諾書提出後、企業側から内定を取り消された経験あり。

「内定承諾書を出した後でも、他社の選考を続けていいんでしょうか?」

新卒の就活でも、製造業の中途転職でも、必ずぶつかる悩みです。

僕自身、新卒時に内定承諾書を提出した直後、こう考えました。

「もっと大きい会社の選考が残っている。承諾書を出した後でも他社を受けていいのか?それとも、ここで決めるべきなのか?」

結論から書くと――

内定承諾書に法的な拘束力はありません。出した後でも辞退は可能ですし、法的には他社の選考を継続するのも自由です。

ただし!

「法的にOKだから態度に出していい」とは、まったく違う話です。僕はここで線引きを間違え、内定を取り消された側の人間です。

この記事では、製造業のキャリアを13年積んできた僕が、内定承諾書の法的位置づけ、出した後でも辞退・他社受験ができる根拠、それでも企業側に取り消されるリスクがある理由、そして承諾書を出した後の正しい立ち回り方を、自分の失敗体験を交えて整理します。

この記事でわかること

  • 内定承諾書の法的位置づけ(民法627条との関係)
  • 「承諾書を出したら辞退できない」は誤解である理由
  • 企業側にも取り消しの権利がある、という当事者目線の現実
  • 承諾書提出後に「やってはいけない言動」3つ
  • 辞退・他社受験するときの伝え方とタイミング

結論:法的には自由。でも「企業から見えている自分」を意識せよ

最初に結論を置きます。

  1. 内定承諾書に法的拘束力はない――出した後でも辞退できるし、他社の選考継続も自由
  2. ただし企業側も「内定の取り消し」をする権利を持つ――合理的な理由があれば
  3. 両者の権利が同等にある以上、勝負は「お互いの信頼を維持できるか」――態度・言葉・タイミングで判断される

つまり、法律で守られているからといって、態度で示してしまうと取り消されるリスクが現実にある。これが僕が体験した一番の教訓です。

内定承諾書の法的位置づけ

そもそも「内定」とは何か

法律上、内定は 「始期付解約権留保付労働契約」 とされています(最高裁判例より)。

砕いて言うと、

  • 入社日を始期とする労働契約は すでに成立している
  • ただし双方に 解約する権利 が留保されている

という状態です。承諾書を出した時点で、企業と労働者の間には すでに労働契約が成立している――ここがポイントです。

民法627条との関係

労働者側から契約を解除する根拠が、民法627条1項です。

「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」

つまり、入社14日前までに辞退を申し出れば、法的に問題なく辞退できる。承諾書を出していようがいまいが、関係ありません。

内定承諾書に書かれている「誓約」の意味

承諾書には「他社の選考は辞退します」「指定日に入社します」といった文言が書かれていることがあります。

これらは 法的拘束力を持つ契約ではなく、道義的な誓約に近い とされています。違反したからといって、損害賠償が認められた判例はほとんどありません(極端な事例を除く)。

ただし、「企業側がそれを根拠に内定を取り消す」のは合理的判断とされる可能性が十分にあります

僕が承諾書提出後に内定を取り消された話

ここからが体験ベースです。

新卒時、地元の中小製造業(100名規模)から内定をもらいました。承諾書も提出しました。法的には、ここで契約は成立しています。

ただ僕は、

  • もっと規模の大きい会社で選考が進んでいた
  • 「他社の結果を見てから決めたい」という気持ちを採用担当に伝えていた
  • 承諾書提出後も他社の面接を継続していた

承諾書を出した1週間後、企業から呼び出され、社長室でこう告げられました。

「うちで働きたいという気持ちが伝わってこなかった。内定を取り消させていただきます」

法律的には、僕の行動は何ひとつ違反していません。承諾書を出したあとに他社を受けるのも、迷いを採用担当に話すのも、本人の自由です。

ただ企業側からすれば、

  • 1人の採用が経営に直結する規模感
  • 「最後まで他社を見たい」と伝えてきた候補者
  • 内定承諾書を出したのは「とりあえずキープ」だと判断された

――この状況で、企業も 解約権を行使した。それだけのことです。法的には対等なやり取りでした。

製造業で内定取り消しが起こりやすい構造

僕が取り消された会社は、いわゆる中小製造業です。13年たって製造業の人事側の感覚もある程度わかってきたので、率直に書きます。

規模 内定取り消しの起こりやすさ 理由
大手メーカー(数千人〜) ほぼ起こらない 採用枠が大きく、1人辞退してもインパクトが薄い
中堅メーカー(数百人〜) まれに起こる 配属計画に組み込まれているため、辞退の兆候は警戒される
中小製造業(100名前後) 起こりやすい 1人の採用が経営判断レベル。志望度が低いと判断したら取り消す

製造業で承諾書を出すとき、特に 中小・地元密着型の企業ほど、態度のブレに敏感 だと覚えておいてください。

承諾書提出後にやってはいけない3つの言動

法的に自由だからといって、これをやると企業側の解約権を発動させやすくなります。僕の失敗込みで3つ挙げます。

① 採用担当に「他社の結果を見てから決めたい」と直接伝える

これは僕がやった失敗そのものです。

採用担当からすれば、承諾書を出した候補者から「他社優先」のニュアンスを聞いた時点で、会社内で共有されます。中小製造業なら役員レベルまで一瞬で届きます。

迷っていても、迷っていることを採用担当には伝えない。これが鉄則です。

② SNSやLinkedInで他社選考の進捗をオープンにする

新卒の頃にはなかった現代的な落とし穴です。

「●●社の最終、行ってきます!」のような投稿は、採用担当に確実に見られています。承諾書を出した企業がそれを見れば、不信感は確実に積み上がります。

承諾書提出後は、選考の進捗をSNSに書かない。これだけは徹底してください。

③ 連絡を遅らせる・無視する

「迷っているから返事を後回しに」というのが、企業から見ると最悪です。

「気持ちが揺らいでいるサイン」と読み取られ、解約権の判断材料になります。返事は早く、内容は無難に。これが基本です。

承諾書を出した後、それでも他社を受けたいとき

ここは法的にOKであることを前提に、現実的な動き方を整理します。

1. 他社選考は「静かに」続ける

承諾書を出した企業に対しては、他社受験のことを伝える必要はありません。法的義務もありません。

進めるなら、有給休暇ではなく シフトの隙間、土日のオンライン面接 を活用するなど、相手企業に気付かれないよう動きます。

2. 結論が出た段階で「速やかに」連絡する

他社で内定が出て、そちらに行くと決めたら その日のうちに、承諾書を出した企業に辞退の連絡を入れます。引き延ばすほど、企業側の損害が大きくなります。

辞退の伝え方は、メールで第一報→電話で直接お詫び、の順がベストです。

3. 辞退理由は「自分の事情」に寄せる

「御社よりも条件のいい企業から内定をいただいたので」

――これは絶対にNGです。

「自分のキャリアを再検討した結果、別の業界に挑戦することにしました」

「家族の事情で勤務地を変えざるを得なくなりました」

など、比較ではなく自分都合で伝えるのが角の立たない辞退の作法です。

13年経って思う、承諾書を扱う上での結論

新卒の自分にいま一言だけ伝えるなら、こうです。

「承諾書を出した瞬間、その会社の人事にとってあなたは『同僚予備軍』。同僚として迎えたい人物に見えるかどうかが、すべてを決める」

法律は対等な権利を保証してくれます。ただ、法律で守られている範囲を最大限使おうとした瞬間に、相手も同じことをしてくる。これが、僕が取り消された側として骨身に染みたことです。

製造業の現場は、特に中小ほど人と人の信頼で動きます。承諾書を出したあとの3週間〜1ヶ月は、「契約は成立している。あとは信頼を積むフェーズ」 と意識を切り替えるのが、結果的にいちばん損をしない動き方です。

それでも転職活動を進めたい人へ

「承諾書は出した。でも、本心では別の選択肢も探したい」

――この気持ちが消えないなら、転職活動を継続するのは合理的です。あとは 静かに動く だけです。

エージェント経由なら、「承諾書を出した状態での転職活動の進め方」も相談できます。同じ悩みを抱える候補者を多数見てきているはずなので、自分1社だけに依存しないほうが安全です。情報源が複数あったほうが、冷静な判断ができます。

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まとめ|法律は守ってくれる、信頼は自分で積む

最後にもう一度、覚えておいてほしい3点です。

  • 内定承諾書に法的拘束力はない。辞退も他社受験も法的に自由
  • ただし企業側も同じく解約権を持つ。態度に出した瞬間にリスクが立ち上がる
  • 承諾書を出した後は「静かに動き、結論が出たら速やかに伝える」。これが最小のダメージで最大の自由を確保する立ち回り方

僕のように「煮え切らない態度を見抜かれて取り消される」失敗をしないために、この記事が役に立てば嬉しいです。

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